地域に根ざす老舗の酒蔵「吉村秀雄商店」


和歌山県北部に位置する岩出市には歴史・文化・自然の魅力が根来地域を中心として沢山ひろがっています。
根來アート散歩のコラムでは、地域で活動する「ひと・もの・こと」にフォーカスして、地域の魅力を発信していきます。

今回のテーマは「日本酒」です。
日本の大地が育む米で造られた日本酒は、和を象徴する飲み物として古くから日本人の食と寄り添ってきました。
和歌山には世界遺産にも指定される自然が多くあり、同時に海に囲まれた土地であるため、山の幸も海の幸にも恵まれています。
そして江戸時代には紀州徳川家として周囲の大名よりも重宝され栄えた歴史を持つ土地です。
御三家として優遇された土地として、江戸時代から日本酒造りも盛んになったという歴史を持っています。

そのため現在でも和歌山北部には酒造が集中して点在しています。
そして岩出市にも酒造があることをご存知でしょうか。
すでに知っている方も、まだ知らない方も根來アート散歩を通して地域の「日本酒」の魅力を再発見していただけたら幸いです。


老舗の酒蔵「吉村秀雄商店」

創業から107年、歴史ある酒蔵「吉村秀雄商店」さんをご紹介させていただきます。
大正4(1915)年に創業され、製糸業を営んでいた吉村家の末子・秀雄が灘の酒蔵に年季奉公したのち、地元で造り酒屋を興したのが始まりです。

吉野熊野国立公園である大台ケ原を源流とする紀の川の伏流水を仕込み水に、創業当時からの土壁蔵での伝統的な地酒づくりが行われています。


平成25年からは日本酒の名人である農口尚彦氏に10年間師事した女性初の能登杜氏・藤田晶子を招聘し、山廃造りをはじめとする米の旨味とキレのある酒、食事を豊かにする酒を目指して、こだわりの酒造りを続けられています。


酒造りにおけるこだわり


「困難な時代においても、誰もが酒を飲めるように。」「酒とともに、幸せを感じられるように。」と考えていた創業者、吉村秀雄の意思は家業の酒造りとして今も受け継がれています。


杜氏 藤田晶子(ふじたあきこ)さんは「食を豊かにする、というと具体的には、飲んでくれる方が幸せになれるお酒を造りたいと思っています。家族や友達や、仕事仲間でもいいですが、美味しい料理を食べながら、うちのお酒を飲んでいい時間を過ごせたな、と思ってもらいたい。そのためにも、食事に合わせて素晴らしいと思ってもらえる酒造りがいちばん大事です。和歌山にはお魚、魚介類がありますし、またお醤油屋さんがあり、金山寺味噌や美味しいものがたくさんあります。地元の食材にたいへん良く合うお酒だと思っております。」と語られています。


主な商品の名前の由来


主銘柄である「日本城」は創業者の吉村秀雄が和歌山城を散策しているときに発案され、日本が世界に目を向け始めた当時に、「日本には、日本城といわれる銘酒がある」とその名を世界に轟かせたいと決意し名付けられたそうです。
そんな「日本城」は和歌山県内最多となる全国新酒鑑評会での金賞受賞数や特選街主催の全国日本酒コンテストにおいても6度の日本一を受賞するという評価を得ており、国内に留まらずアメリカ、ドイツ、メキシコなどにも輸出され、創業者が世界に目を向けた決意が実現された世界に通用する日本酒でもあります。


「車坂」熊野古道を舞台とした小栗判官伝説にちなんだ、和歌山市に実在する坂の名前からとられています。死と再生の物語である小栗判官の伝説に日本再生の願いを込め名付けられました。


食を豊かに、地域に根ざす酒造り


今回、地域の酒蔵である「吉村秀雄商店」さんを知ることにより、日本酒を通して地域と寄り添い、豊かな食の未来を守り続けてくれる、大切な存在であることに気づかされました。
そして地域の風土で造られた日本酒と食卓を囲めることが、これからも地域の人々とともに日常を豊かに彩るキッカケを作っていくんだなと、改めて感じることができました。

吉村秀雄商店のHP
https://nihonsyu-nihonjyou.co.jp/